敷地の凹みを利用し、すり鉢状の円弧を浅間山の裾野のなだらかな斜面にはめ込むことから、この家はスタートした。細長い建物の中に円弧の軌跡が入り込み弓形の居間となった。居間の前面には全開放できる引戸が計画され、対峙する居間と庭は完全に1つの円の中に納まる。円形の庭から眺める居間は、プロセニアムで切り取られた舞台のように見える。そのとき居間の正面にある、ピアノや暖炉、テレビや照明、更にキッチンや階段にからみながら湾曲する土の壁は、重要な舞台背景となる。左手から現れる主人公が右手の石のテーブルに腰掛ける場面から、このステージが始まる。
北西側外観の夏景色。庭には木々が生い茂る自然豊かな敷地に建っています。


右:北西側外観の冬景色。外壁の板張りはカナダ杉。年月と共に自然に溶け込む佇まいになりました。
左:庭から居間をみる。


右:庭と北西側外観。庭は浅いすり鉢状になっています。円形を2つ重ねたような形のデッキは室内の居間とひと続きの空間として使えます。
左:模型。すり鉢状の庭と建物を一体的に設計しています。


居間から庭を見る。すり鉢状の庭に囲まれた、落ち着いた空間。

2階から居間を見る。丸窓からは庭の景色が見えます。

左:平面図と断面図。平面プランは、円形の庭が室内に入り込んだような構成になっています。
右:立体的な平面スケッチ。室内へ入り込んだ円形の庭は、室内では円弧状の土壁として表現しています。


左:室内の土壁。この家は浴室以外土壁としています。光の入り方によって様々な表情が浮かび上がります。
右:居間の建具。格子戸にすることで、視線は遮りつつ、光は取込めるようにしています。

用途 | 別荘 |
竣工 | 1991年 |
場所 | 長野県 |
完成時の居住者 | 夫婦+子世帯の3世帯 |
構造 | 木造2階建 |
延床面積 | 188.6㎡ |
施工 | 河本工業+安藤工務店 |
受賞等 | OMソーラー地域建築賞 |