デザイナーのアトリエ兼プライベート美術館。山を背にして前方に川が流れ、周囲には田畑と農家が点在する素朴で生活感のある風景の中にこの建築はある。
「世界でもっとも美しい家」をつくって欲しいという依頼の言葉。アーチストの創作と思索の場をつくるために、風船を最大限膨らませたような、できるだけ大きな空間を用意した。
空間の大きさ、形、そこに注ぐ光、素材。そうした基本的な部分を慎重に計画し、すぐ近くに住む大工と左官が、地域で入手しやすい材料を使って作った建築。伝統的な工法を使ってはいるが、しかしこの建築は決して過去に戻ろうとしているのではない。
建物外観。あえて無塗装にした外壁の板張りは、風雨にさらされ、風景に溶け込むいい色合いになっています。
夕方の外観。畑に囲まれたのどかな風景の中に、温かな光が浮かび上がります。屋根はガルバリウム鋼板の瓦棒葺き。
左:内観。松の梁に丸太のままの杉の束を建てた小屋組。 右:夕方の内観。照明に照らされた構造材は、より一層存在感を感じさせます。
内観。展示された半円形のデスクは、森豪男氏の作品。
左:地元の土に石灰を混ぜ、バンブーネットに荒壁をつけ、返し塗りをしただけの壁。 右:一部の壁はバンブーネットを表したままとしました。
上:平面図。ぴょこんと飛び出た部分は水廻り。その向かい側にはキッチンがあります。
下:断面図。切妻屋根の架構を活かした、シンプルな空間。
用途 | アトリエ・美術館 |
竣工 | 1995年 |
場所 | 福島県 いわき市 |
構造 | 木造2階建 |
延床面積 | 207.01㎡ |
施工 | 大工棟梁 鈴木徳一
左官 猪狩忠生 |