かつて宿場町として栄えた福島県いわき市上三坂地区に、もう一度にぎわいを取り戻そうと、2010年に「再生 上三坂ホロスケの里」と言うタイトルの冊子をまとめた事がご縁で、上三坂地区にあった築100年の土蔵の家を交流施設OJONCO館として蘇らせる仕事に、設計者として参加させていただく機会を頂きました。
上三坂地区の中心にある中町の宿場で3代に渡ってお医者さんを営んだ旧石川医院を、いわき市出身の女性3人が中心になって立ち上げた社団法人が譲り受け、地元の人たちの記憶の中にあるこの建築を活かして、いわきと東京、地元の人たちの交流の場として役立てようと言うものです。
しかし、築100年の家は土台が腐り床は波打っている状態でした。またこれまでの改修で壁を撤去してしまったために構造的な安定を大きく欠いおり、その辺の補強が急務でした。住宅故の細かな間仕切や畳の床も大人数が会する空間としては不向きで、その辺りの改修をしながら高度成長時代の新建材等も全て取払い、かつて在った力強い木組みを目に見えるように現し、漆喰壁を補修し、土蔵の空間の気持ち良さを楽しめる様にしました。
施工は地元の矢吹工務店が引き受けてくれました。地元で木造の家をたくさん作って来た矢吹棟梁と、関東からやって来た建築家は木材の太さに関する美学の違いは多少在ったとしても木を愛する気持ちは共通で、掛け合い漫才のようにお互いを尊重し知恵を出し合い、1つ1つの問題をクリアーして行きました。
1階は42帖の広さの何にでも使える一室空間が出現しました。床は軟らかくて暖かい杉の厚板を一面に張りました。歩いたり座ったりした時の気持ち良さは格別です。